【獣医師監修】犬の甲状腺機能低下症ってどんな病気?症状と原因を解説します。
この記事の内容
犬の甲状腺機能低下症は中~高齢の犬に多くみられる病気です。
加齢に伴う変化によく似た症状を呈することもあります。「最近元気がないな」「よく毛が抜けるな」それもしかしたら甲状腺機能低下症の症状かもしれません。
今回は犬の甲状腺機能低下症の症状や原因、治療について解説します。


荻野 (獣医師)
動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。
犬の甲状腺機能低下症とは?
甲状腺機能低下症とは何らかの原因で甲状腺ホルモンの分泌が減り、代謝に支障をきたす病気です。
猫ではほとんどみられません。
犬の甲状腺ホルモンはどんな働きをしている?
甲状腺ホルモンは体の代謝を司るホルモンの1つで、以下のような作用があります。
- 脂肪や糖分を燃やして細胞の新陳代謝を盛んにする
- 体が興奮状態になる交感神経を刺激する
- 成長や発達を促す
甲状腺ホルモンは首の喉あたりに左右で対に位置する「甲状腺」という組織から分泌されています。脳から分泌された刺激ホルモンによって分泌が促されています。

犬の甲状腺機能低下症の原因
甲状腺機能低下症は甲状腺の機能的、あるいは構造的異常によって甲状腺ホルモンの分泌が低下することで発症します。
甲状腺は首の喉あたりに左右で対に位置しており、ここから分泌される甲状腺ホルモンは体の代謝を司るホルモンの1つです。脂肪や糖分を燃やして細胞の新陳代謝を盛んにする、体が興奮状態になる交感神経を刺激する、成長や発達を促すといった作用があります。また、甲状腺ホルモンは脳から分泌される刺激ホルモンによって分泌が促されています。
甲状腺機能低下症では、脳の異常による下垂体性や視床下部性が原因であることは多くありません。
甲状腺そのものの機能不全や免疫介在性(免疫機能の異常により甲状腺が破壊されてしまうこと)が原因の大半を占めています。
また犬においては甲状腺腫瘍によっても甲状腺機能低下症が引き起こされます。甲状腺腫瘍と聞くと、甲状腺ホルモンがたくさん分泌されるイメージをしやすいですが、実際のところ甲状腺ホルモンの数値は正常か、むしろ低下していることがほとんどです。
このホルモンの分泌が低下することで全身の代謝がうまく働かず、皮膚の異常や脱毛、不整脈などの様々な症状を引き起こすのです。
甲状腺機能低下症の多い犬種や年齢は?
中高齢の犬での発症が多くみられます。
- ミニチュア・シュナウザー
- アメリカン・コッカースパニエル
- シェルティ
- ゴールデン・レトリーバー
上記の犬種では遺伝的な要因があるとされ、甲状腺機能低下症の発症が比較的多いとされています。
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犬の甲状腺機能低下症の症状
特徴的な症状はかゆみを伴わない左右対称の脱毛、しっぽの脱毛(ラットテール)、皮膚の苔鮮化やべたべた、低体温です。
甲状腺ホルモンの低下によって代謝機能が低下し、元気や食欲が落ちることも少なくありません。
上記のほかにもおうちの子に当てはまる症状がないか、チェックしてみましょう。2つ以上当てはまる場合、甲状腺機能低下症が疑われるかもしれません。
- □なんとなく元気がない
- □目に覇気がない
- □寝てばかりいる
- □毛並みや毛艶がよくない
- □毛がよく抜ける
- □発情期が来なかったりと不定期(未避妊未去勢に限る)
- □寒がりになった
- □ふらつく

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犬の甲状腺機能低下症の診断
犬の甲状腺機能低下の診断には臨床症状と併せて診断することが重要です。
一般血液検査
前述した症状が続く、複数認められる場合には血液検査を実施します。

これらの検査から数値に疑わしい結果が示されたら、甲状腺ホルモン(T4 、fT4、TSH)を測定する検査に進みます。
ホルモン測定検査
- T4(サイロキシン)
- 甲状腺ホルモンの一つで、低値を示す場合甲状腺機能低下症を疑う。他の病気や薬剤によっても低下することがある。
- fT4(血清遊離T4)
- T4が血液中でタンパク質と結合して存在するのに対し、単独で存在する。他の病気や薬剤の影響を受けにくい。
- TSH(甲状腺刺激ホルモン)
- 脳から分泌される甲状腺ホルモン分泌を促すホルモンで、甲状腺自体に問題があるか否かの判別に用いられる。
甲状腺ホルモンは午前中にたくさん分泌される傾向があります。また、甲状腺機能低下症で特徴的な数値上昇を示すコレステロール値やトリグリセリド値は食事の影響を非常に受けやすい項目です。
したがって12時間の絶食と午前中に検査を行うことで、より正確な診断につながります。
甲状腺機能正常症候群(Sick Euthyroid Syndrome)
甲状腺ホルモンの低下以外の要因でT4が低下し、その状態が長期間続くことで甲状腺機能低下症のような症状が出てくることがあります。この状態を甲状腺機能正常症候群(Sick Euthyroid Syndrome)といいます。
甲状腺が正常に働いているにも関わらず、腫瘍や全身の感染症、心臓や神経系の病気、貧血、クッシング症候群、糖尿病などによって間接的にT₄が低下してしまうことが原因です。また抗てんかん薬やステロイドの投与などによってT₄が低下する場合もあります。
犬の甲状腺機能低下症の治療
甲状腺ホルモン剤(レボチロキシン)の内服薬で治療します。心疾患や糖尿病などを併発している場合には、少ない量から開始することがあります。
治療開始後も定期的に血中の濃度を測定し、症状や体調にあった薬の調整が必要です。
症状の改善には時間を要することもありますが、適切に管理できれば健康な子と同じ生活をすることができます。一方で完治は難しく、生涯付き合っていく必要のある病気です。

基礎疾患を見落としT₄の数値だけを信じてしまうと甲状腺機能低下症と誤診することもあります。甲状腺機能正常症候群の犬に甲状腺ホルモン剤を投与するととても危険ですので、考えられるほかの疾患を除外し、確定診断のもとで服用しましょう。
まとめ|犬の甲状腺機能低下症
犬の甲状腺機能低下症は予防法はなく、早期発見と早期治療が大切です。
日常のちょっと違いや変化に、一番早く細かく気づいてあげられるのはご家族です。
また甲状腺機能低下症は生涯お付き合いが必要な病気です。状態に合わない薬用量での使用は時に命に関わります。
不安や気になることがあればお気軽にご相談ください。