【獣医師が解説】犬や猫の血液凝固異常とは?止血のメカニズムと凝固異常の原因・症状を解説します

「ぶつけた覚えもないのにあざができている…」なんてこと、人では子供から大人までよくありますよね。犬や猫もぶつけてしまったり注射の後にあざができた、といったことがあります。

でもそれ、実は隠れている重大な病気のサインかもしれません!

今回は犬や猫の止血のメカニズムや血液凝固異常が起こる原因・症状について解説します。

\この記事を書いた人/
荻野 (獣医師)

荻野 (獣医師)

動物とご家族のため日々丁寧な診療と分かりやすい説明を心がけています。日本獣医輸血研究会で動物の正しい献血・輸血の知識を日本全国に広めるために講演、書籍執筆など活動中。3児の父で休日はいつも子供たちに揉まれて育児に奮闘している。趣味はダイビング、スキーと意外とアクティブ。

犬や猫の止血のメカニズム(止血機能)

犬や猫も人と同じく怪我などで出血した場合、血を止めるために血球や血液中の凝固因子と呼ばれるものが働きます。

このシステムそのものを「止血機能」といいます。

まずは、出血が起きて止血が起こるまでのメカニズムについて、詳しくご説明していきます。ひとえに止血とは言っても、実は非常に多くの工程が関わっているんです!その工程をざっくり大きく分けると「一次止血」と「二次止血」、最後に不要になった血栓を溶かす「線溶系」の3つに分けられます。

①一次止血

血管が破れて出血が起こると、血液が漏れ出る穴を小さくするために血管が収縮します。次に血液中の血小板が穴に集まり、血栓と呼ばれる塊を作って塞ぎます。某細胞系アニメでも有名なシーンですね。

この血栓ができるまでの工程を「一次止血(血小板血栓)」といいます。

②二次止血

一次止血で造られた血小板だけの血栓は不安定で脆く、止血には十分な強度には足りません。そこで網状のたんぱく質(フィブリン)を形成するため、血液成分の凝固因子というタンパク質が働きます。血液凝固因子は連鎖的に反応を起こし、最終的にフィブリンをポリマー(網状)に形成します。血小板を覆うことで強度を増すことができ、これで止血が完了です。

この一次止血以降の工程を「二次止血(フィブリン血栓)」といいます。

③線溶系

止血作用で固まったフィブリン血栓が永久に塊として体内にあると血管が詰まってしまうため、止血が終わると分解されます。線溶系ではプラスミンという酵素が関わっており、プラスミンが活性化すると塊が溶けて体に吸収されていきます。

このフィブリン血栓が溶けて分解される工程を「線溶系」といいます。

そもそも血液凝固因子ってなに?

血液凝固因子とは多くが肝臓でつくられているタンパク質で、どれか1つでも異常があると止血に支障をきたします。

主に二次止血に関与しており、第Ⅰ~第ⅩⅢ(1~13)の12種類(第Ⅵは欠番)存在しています。血液凝固因子の作用は「内因系」と「外因系」に分けられます。

  • 内因系
  • 血管の内皮細胞下にある繊維と凝固因子が接触する、すなわち血管壁が損傷し出血することにより始まる

 

  • 外因系
  • 血管だけでなく組織も障害され、血液が空気や組織液といった血管外の物質に触れ、トロンボプラスチンと呼ばれる物質が放出されることにより始まる

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犬や猫の血液凝固異常が起こる原因

止血機能のどこかしらに異常があることを「血液凝固異常」と呼びます。血液凝固異常が起こる原因は、血液凝固因子の欠損によるもの、栄養不足・薬物の影響によるもの、感染症などによるものなど様々です。

血液凝固因子の欠損

止血のメカニズムでも説明した通り、血液凝固には様々な因子が関わっており、どれか一つでも欠損していると止血ができなくなってしまいます。

代表的な病気が「血友病」です。

  • 血友病
  • 血友病は第Ⅷ因子(血友病A)、第Ⅸ因子(血友病B)の欠損もしくは不足が原因で起こる遺伝性疾患。
  • 主に雄犬に発症し、比較的血友病Aの発症が多い。
  • 好発品種:ジャーマンシェパード、フレンチ・ブルドッグ など

フォンヴィレブランド病

血友病の次に多いと言われている遺伝性疾患で、血液凝固に必要なフォンヴィレブランド因子の欠損や不足が原因で起こります。犬ではウェルシュコーギー・ペンブローク、ドーベルマンなどに多く発症すると言われていますが、その他多様な犬種に発症の報告があります。

血小板減少症

一次止血としてはじめに集まる成分、血小板が少なくなってしまう病気です。血小板が減少する要因には以下が挙げられます。

  • ・骨髄細胞で作られる血小板が少ない(骨髄腫瘍など)
  • ・血小板が使われすぎている(播種性血管内凝固症候群:DICなど)
  • ・自己免疫疾患により血小板が破壊されている(免疫介在性血小板減少症:IMTPなど)
  • ・脾臓に蓄積されすぎている(肝疾患などによる脾腫)
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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)

SFTSウイルスを保有しているマダニが媒介する病気で、人にも感染する人獣共通感染症です。詳しくはこちらをご覧ください。

発熱や消化器症状(嘔吐下痢など)が主な症状ですが、重症化すると死に至ることもあります。

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ビタミンK欠乏・殺鼠剤中毒

一部の凝固因子は肝臓でつくられる際にビタミンKを必要としています。

殺鼠剤の成分であるワーファリンはビタミンKの働きを阻害してしまうため、殺鼠剤の誤食などにより中毒を起こすと止血機構に異常をきたします。また、単純に栄養不足といったビタミンKの摂取不足も要因になりえます。

抗血液凝固剤の使用

アスピリンやヘパリンという抗血液凝固剤の使用により、血液凝固作用が阻害されてしまいます。

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犬や猫の血液凝固異常の症状

血液凝固異常によって血が固まりにくいと、全身に出血が起こりやすくなります。

最もご家族が気づきやすい症状は皮下出血です。赤~青紫色のあざができ、「点状出血」や「紫斑」と呼ばれています。紫斑についてはこちらでも解説しています。

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また爪切りの際に出血がなかなか止まらないといったケースや、その他にも以下のような症状がみられることがあります。

  • ・血便、下血
  • ・鼻からの出血
  • ・血尿
  • ・目の中の出血
  • ・喀血、吐血

これらの症状については以下の記事でも紹介しています。

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血液凝固異常の検査と治療

血液凝固異常の検査

血液凝固異常を疑う症状が認められたら、いくつかの検査を組み合わせて行い原因を探します。例えば以下のような検査があります。

  • ・全血球計算(貧血の有無)
  • ・赤血球凝集反応(顕微鏡下で赤血球同士が結合する反応の有無)
  • ・自己抗体の有無
  • ・レントゲンや超音波検査
  • ・PT:プロトロンビン時間(内因系の異常の有無)
  • ・APTT:活性化部分トロンボプラスチン時間(外因系の異常の有無)
  • ・フィブリノーゲン
  • ・FDP、Dダイマー(線溶系で産生される物質)

血液凝固異常の治療

血液凝固異常の治療は原因疾患によって大きく変わりますが、検査結果が出て確定診断がつく前に治療を開始することもあります。

播種性血管内凝固症候群(DIC)など急速に症状が進む疾患が原因で凝固異常が起こっている場合には、早急に治療を開始しないと死に至るケースも少なくないのが理由です。

まとめ|早めに受診すべき?

血液凝固異常が起きている場合は、急速に悪化し死に至ってしまうケースもある危険な状態であることが少なくありません。

どのような病気にも言える事ですが、なるべく早くに変化に気づき、治療をはじめることがとても大切です。

疑わしい症状がみられたら、すぐに動物病院を受診しましょう。元気にしているからと、ご自宅で様子を見ているうちに症状が進行してしまうこともあります。

前述したようにご家族が最も気づきやすいのは皮膚にみられるあざです。被毛の豊かな犬や猫は気をつけてみてあげないと分かりにくい場合がありますので、ケアや遊びのついでに日々体のチェックをしてあげましょう。

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